選挙運動期間になると、選挙事務所に貼り出される「祈必勝」「祈勝利」「祈当選」などのポスター。
これらを選挙為書きといい、候補者に対して陣中見舞いとして贈られることがありますが、公職選挙法違反ではないのかと気になる方もいると思います。
この記事では、そんな「選挙為書き」について一体どんな理由で合法なのか、どのタイミングで贈ったら良いのか、為書きのメリットについて紹介していきます。
【この記事のポイント】
- 「選挙為書き」は違反ではない
- 「選挙為書き」を贈るタイミングは、選挙期間前からでも可能
- 「選挙為書き」は贈る側にも候補者にもメリットがある
選挙為書きとは?
まずは為書きとは何なのか、読み方、意味、他の言い方について紹介します。
読み方
読み方は、為書き(ためがき)です。
意味
為書きとは、絵や書物に誰のために、また何のために作成したものかなどを書き添えること、また記した字句のことをいいます。
公職選挙においては、「〜候補の為に」「必勝を祈る」という意味を込め大きく書き、選挙事務所に届ける激励のビラのことを選挙為書きといいます。
他の言い方
選挙為書きは、他にも「檄ビラ」、「絵ビラ」、「必勝ビラ」、「必勝ポスター」、「応援ポスター」などと呼ばれます。
為書きは公職選挙法違反じゃないの?
選挙事務所で必ず見かける為書きとは、一体どんな理由で合法になっているのかを見ていきます。
為書きは違反ではない
まず結論として、選挙の際に「陣中見舞い」として候補者に贈られる「為書き」は、違反ではありません。
●一般の個人が贈る場合
一般の個人が「陣中見舞い」を贈る場合の注意点を下記に紹介します。
(前略)
「陣中見舞い」や「当選祝い」は政治家(現職の公職者の他に候補者や立候補予定者も含まれる)に対する寄附とみなされる。(中略)
◇政治資金規正法第二十一条の二
何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはならない。
(中略)
つまり、選挙期間中は寄附を行うことができるということである。寄附として想定されているのは、条文にもある金銭等の他に物品によるものも含まれる。金銭等とは、現金の他に有価証券のことであり、「陣中見舞い」を行うとなった時に、相応の金額の現金を包んで持って行くことが可能である。物品による寄附でも良いので、お花などを持ち込むことも可能だが、注意が必要なのがお酒の類だ。(後略)
引用:政治山『「陣中見舞い」や「当選祝い」を行う際の注意点』
個人による政治家(候補者を含む)に対する寄附は、年間150万円までは可能になっていて、上記の通り「陣中見舞い」は政治家に対する寄附にあたります。
寄附は「金銭等」と「物品」に分けられ、「為書き」は「物品」の寄附ということになります。
この「物品」の中には、選挙期間中に差し入れてはいけないものが定められていますが、「為書き」はこれにあたらないため贈ることが可能です。
●政治家が贈る場合
政治家が「陣中見舞い」を贈る場合の注意点を下記に紹介します。
(前略)寄付とは、金銭や物品などの供与や交付のことを指すのである。(中略)
公職選挙法で政治家による選挙区内での寄附行為が禁じられている。(中略)実態として「陣中見舞い」や「当選祝い」を合法的に行う方法がある。それは、政治団体に対する寄附を行うという方法だ。(後略)
政治家が「陣中見舞い」や「当選祝い」として金銭を候補者や当選者のもとに持って行ったとしても、それを政治団体間での寄附行為として処理してしまえば適法に処理されることになるのだ。(中略)政治団体を利用し、政治資金収支報告書に記載するなどの合法的な処理を心がければ、違法性が問われるような事態には陥りにくいのも事実である。
上記の通り、公職選挙法では、政治家による選挙区内での寄附行為が禁じられています。
ですが同じ選挙区内であっても「陣中見舞い」として贈られた「為書き」は政治団体間の寄附として処理されれば合法となります。
公職選挙法や政治資金規正法に関する詳しい記事は、政治山「政治家による『陣中見舞い』や『当選祝い』は可能なのか」をお読みください。
為書きを贈るタイミングは、選挙期間前から可能
では、どんなタイミングで為書きを贈ったら良いのでしょうか。
(前略)政治家以外の一般市民が政治家に対して行う「陣中見舞い」は、選挙期間中に行うのであれば、金銭等か物品で。選挙期間外であれば物品で。そして、「当選祝い」は必ず物品で。良かれと思って行っても法律に違反する可能性もあるので、細心の注意を払いたい。
引用:政治山『「陣中見舞い」や「当選祝い」を行う際の注意点』
上記の通り、物品の寄付であれば、選挙期間が始まる前、選挙期間中、また当選後の「当選祝い」としても政治家に対して行えることになっています。
よって、「為書き」を贈る場合は、選挙期間が始まる前からでも贈ることが可能です。
その場合は「陣中見舞い」という名目ではなく「事務所開設祝い」として贈る方が意味合いとしては良さそうです。
一方で金銭等による寄附は、政治活動に対しては認められていませんが、選挙運動期間に対しては認められています。
選挙運動とは、その選挙の公示日(告示日)から投票日の前日までのことをいいます。
【 タイミング別に見る政治家(候補者)に対する金銭や物品の寄附の可否 】
金銭等 | 物品 | |
---|---|---|
選挙期間前(政治活動中) | × | ○ |
選挙期間中(選挙運動中) | ○ | ○ |
選挙期間後(当選祝い) | × | ○ |
為書きを贈るメリット
選挙の為書きを贈るメリットや意味合いはどんなものがあるのでしょうか?
候補者へ激励の気持ちを伝えられる
地元の友人・同級生が議員として立候補した場合や、身内・親戚の誰かが出馬した場合など、一般の個人でもそのような機会が訪れることもあるでしょう。
その場合に、応援する気持ちを示すために為書きを贈ることができます。
選挙運動には何かとお金がかかるため金銭のお祝いの方が助かる場合もあるとは思いますが、「祈必勝」と大きく書かれた為書きは迫力やインパクトがあり、受け取った候補者の方には激励の気持ちが伝わります。
候補者が人脈の広さをアピールできる
たくさんの方から為書きをもらった候補者は選挙事務所内にその為書きを貼り出すことで、それだけ多くの人からの支持を得ているというアピールにつながり、厳しい選挙戦に立ち向かうための大きなエネルギーになります。
政治家が贈る場合、選挙後を見据えた自己PRにつながる
政治家が為書きを贈る場合は、一つの選挙で複数の候補者に贈る場合があります。
候補者に対する応援の気持ちを示すだけでなく、選挙後を見据えた自己PRになるというメリットがあります。
まとめ
公職選挙法や政治資金規正法のややこしい条文が出てきて分かりづらい部分があったと思いますが、結論として、
【この記事のまとめ】
- 「陣中見舞い」として「為書き」を贈ることはOK
- 「為書き」を贈るタイミングは、選挙期間前からでもOK
- 「為書き」を贈る側にも候補者にもメリットがある
ということでした。
選挙為書きは手書きがおすすめ
「陣中見舞い」や「事務所開設祝い」に選挙為書きをご検討の際は、心を込めて丁寧に仕上げた手書きの為書きをおすすめします。
手書きの良さは、一枚一枚が唯一無二の仕上がりとなり、印刷とは違った味があります。
墨で書いた時に出る特有の線も、迫力を感じさせる要素の一つです。
ぜひ、手書きの為書きを贈って候補者の方に喜んでもらいませんか?